ACE is BACK!

Interview by TAKASHI OCHIAI
”エース・フレーリーが来日する”と知って”あらま”と
驚いたファンも多いことだろう。彼がキッスを辞めて
からスタートさせたフレーリーズ・コメットは短命に終
わり、’89年にソロ名義で出したアルバム『トラブル
・ウォーキン』を最後にレコード契約も失い、最近では
これといった話題もなかったエース・フレーリーが自分
のバンドを連れていきなり来日、しかも日本でクラブ・
ツアーをすると言うのだから、”まさか”と思ったファン
も多いはずだ。’78年の3月にキッスのメンバーとして
2度目の来日を果たし、前年の初来日公演に続いて
武道館で演奏したことを思えば、今回はちと寂しい来日
である。だが、何てったって彼はもはや伝説となった
キッスの初代ギタリストだ。その事実だけで僕はエース
の事をひいきしてしまうが、とにかくどういう状況であろう
と”俺には関係ないよ”と言った感じで、ただがむしゃらに


ロックする彼の姿勢は立派と言うしかない。ライブでは
全くキーが合わない「デトロイト・ロック・シティ」を必至に
なって歌ったりもしていたが、それを失笑して終わらせて
しまうことも出来るけど、そうやって、40をとうに過ぎた
男が一生懸命ロックしている姿に素晴らしい価値を見た
気がする。実際、あまりコンディションも良くなかったのか
、今回のステージではギターもヴォーカルもちとよれよれ
だったが、あれだけのガッツがあればエースははまだまだ
やっていけるだろう。僕なんてステージに向かって、”エース
、やっぱりあんたは最高だよ”の賭け声のひとつふたつ飛
ばしたくなったぐらいだ。
 このインタビューは、その来日時にエースと会って話を聞
いた時のものだった。寝て起きたばかりの格好でインタビュー
と写真撮影にまで応じてくれて、こちらの方がビックリしたが、
そういう些細なことは全く気にしない豪快なロックン・ローラー
の声を早速お届けしよう。
まずは15年ぶりに日本のファンの前で演奏されてみて、いかがでしたか。
 日本のオーディエンスも凄いエナジェティックで、前よりももっとエキサイティングになった感じだね。
多分この15年間で日本のオーディエンスも少しばかりそう変わってきたんじゃないのかい?
と言うのも、15年前にキッスが武道館でプレイした時、オーディエンスはずっと椅子に座っていたのを
覚えているからね。だから、日本のオーディエンスも少しアメリカナイズされて来たように思うよ。
アメリカのキッズはもっと凄いけどさ、ハハハ(笑)。
 そもそもフレーリーズ・コメットは、どうなってしまったんですか
あれはとっくに解散してしまったよ。今のはエース・フレーリー・バンドだ。もうフレーリーズ・コメット
ではない。俺のバンドだよ。ほら、おれがキッスを辞めた後、1986年にフレーリーズ・コメットの
ファースト・アルバム『フレーリーズ・コメット』を出しただろう(ちなみに、これはエースの記憶違いで、
リリースされたのは’87年)。あの後、結局フレーリーズ・コメットは『ライブ・プラス・ワン』(’88年)と
『セカンド・サイティング』(’88年)を出して解散したんだ。最初は凄くうまくいってたんだよ。とにかく、
俺はメンバーが皆平等の立場で民主的にやって行きたかったけど、結局俺のバンドって事でプロモー
ションされてしまって、フレーリーズ・コメットと言うよりはむしろエース・フレーリーズ・コメットの様な
感じになってしまった。それでバンドがうまく行かなくなてしまって、メンバーが皆離れて行ってしまった
んだよ。だから、エース・フレーリー・バンドをスタートさせたんだ。本当に俺はあのフレーリーズ・
コメットで民主的にやって行きたかったんだけど、ファンがそれを認めなかった。ライブで俺以外の
メンバーが歌ったりすると、オーディエンスからブーイングが起こるのさ。ファンにしてみれば俺だけが
歌って、ギターを弾いていればいいんだろうけど、フレーリーズ・コメットでライブをやってた時はいつも
そうだった。だから、それならいっその事、ソロでやったほうがと思って、今のエース・フレーリー・
バンドをスタートさせたのさ。
浴衣でポーズ!ポコっと出たお腹がgoo!(^^;;)
 そのメンバーは!?今のバンドにはあなたの旧友のリッチー・スカーレット(g、vo)が加わってますよね。
ああ。リッチーとはもう長い付き合いになる。ほら、キミが持ってきたこのブートレッグ(フレーリーズ・コメットがまだ正式にデビュー
する前の’85年3月にNYのTheLamourと言うクラブでのギグを収録した海賊盤)の裏ジャケットにもちゃんと彼の名前がクレジット
されている様に、リッチーは初期のフレーリーズ・コメットのメンバーでもあったんだよ。今はそのリッチーとドラムスのスティーブ・
ウェイニ−だろう、そしてベース・ギターのマーク・ノーマンドと言った3人に俺という4人編成のバンドで活動しているんだ。
 ちなみに、そのリッチ−・スカーレットとはいつ頃からの付き合いなのですか。
彼の事はもう随分前から知っているよ。そもそもリッチ−はキッスのエンジニアだったエディ・ソーランの友人でね。それでエディから
紹介されてリッチ−と知り合ったんだ。リッチ−は俺の(最新作にあたる)アルバム『トラブル・ウォーキン』(’89年)にも参加している。
フレーリーズ・コメットが解散した後、俺はまたリッチ−と一緒に活動する様になって今のバンドをスタートさせたって訳さ。
 今のバンドでレコーディングはしているのですか。
ああ、やってるよ。丁度今、アルバムを作っている所さ。
 それはいつ頃、リリースされるのですか。
実は今、その事でアメリカの3つか4つのレーベルと契約の話をしている所なんだ。そういう訳で、まだハッキリした事は
言えないんだけど、多分’94年の初め頃にはリリース出来ると思うよ。
え?キーが合ってない?いいじゃん、そんなの!(笑)
 なるほど。ところで、あなたがキッスを脱退した理由についてはこれまでに色々報じられて
来ましたが、その真実をここで改めて聞かせていただけますか。
キミは(アメリカの)ギター・プレーヤー誌とかの記事は読んでないのか!?
 (こっちもややムッとして)いや、別に人が書いた記事の事はこの際、どうでもいいんです。
ただあなたとピーター・クリスが辞めたあとのキッスは、メイクをしていた頃のキッスとは全別
のバンドと言ってもいい位、音楽的にもガラリと変わってしまいましたよね。だから、あなたが
キッスを辞めた一番の原因と言うのは、やはり音楽的相違ではなかったのかと前々から疑問に
感じていたんですよ。
 
うん。確かにキミの言うとおり、それがキッスを辞めた一番の大きな理由さ。ほら、キッスの
『魔界大決戦』(’81年/原題はMusicFromTheElder)と言うアルバムがあるだろう!?あれを
作っている時、俺はちっともハッピーじゃなかった。だから、俺は自分がやりたい音楽をやる為にキッスを
辞めたんだ。そいつは俺が辞めた後のキッスのアルバムと、フレーリーズ・コメットのアルバムを聴き比べ
れば判るはずさ。俺が辞めた後のキッスのアルバムよりもフレーリーズ・コメットのアルバムの方がいい
だろう!?(笑)俺も昔のキッスのは今でも好きさ。でも、キッスを辞めた事を後悔はしていない。だって、
あのままキッスにいても俺はちっともハッピーじゃなかっただろうし、実際にキッスを辞めてからは何でも
自分の好きなように出来るからやってて凄く楽しいさ。キッスも最初はよかったんだけど、やってくうちに
ポール(スタンレー)とジーン(シモンズ)のエゴによる問題も多くなってきて、最後の方だは、俺もヤツらと
一緒にやってられなかったからね、ハハハ(笑)
 そうすると、オリジナル・メンバーによるキッスの再結成なんて絶対にあり得ないという事ですか。
ハハハハ(笑)そういう噂は良く聞くよ。”オリジナル・キッスが再結成するらしい”ってヤツだろう!?
まあ、もしそれをやるとしたら、問題はポールとジーンだな。
 というと!?
いや、もしポールとジーンがそれをやりたいと言うのなら、俺は考えてもいいって事さ。
 ピーター・クリスは、どうでしょうね。
多分彼も俺と同じで、ポールとジーンがその契約のことをちゃんとしてくれて、お金の事もきちんとしてくれるって言うんだったら、
やると思うよ。ピーターとは今でもいい友達なんだ。よく2人で話もするし、ついこの間も彼のニューアルバムでギターを弾いた所さ。
彼も今、ニューアルバムを作っているんだ。その中の2,3曲でギターをプレイしてきたばかりなんだ。
 では、ピーターとオリジナル・キッスの再結成について話したりするのですか。
そういう噂をよく聞くから、そのことについて彼と話したりもするよ。ポールとジーンがちゃんとお金をくれるんだったら、
俺達はやってもいいよなってね、ハハハハ(笑)。
 (笑)そう言えば、キッスのデビュー・アルバム『地獄からの使者/キッス・ファースト』(原題はKISS)がアメリカで
発売されてから、’94年の2月で丁度20年になりますよね。そのデビュー20周年に向けてポールとジーンが自ら
音頭を取ってガース・ブルックスやレニー・クラヴィッツなどにキッスの曲をカバーさせたトリビュート・アルバムを
作っていると言う話は知っていますか。
知ってるよ。いいんじゃないの!?面白そうで(笑)。
 そのトリビュート・アルバムとは別に、今でも若いミュージシャンの多くが昔のキッスに憧れて、オリジナル・キッスの
コピーをしたりしている現象をどう思いますか。
ハハハハハ(笑)。確かに今の若いミュージシャンの中に昔のキッスが好きだというヤツが多いのは知ってるよ。
でも、昔の俺達が今の若いミュージシャンに大きな影響を与えたとは思ってないし、そんな実感はないなあ(笑)。
でも、昔のキッスはポールとジーンがシリアスな事をやって、俺とピーターがクレージーな事をやる(笑)、その辺のバランス感覚が
魅力だったんじゃないか。俺はそう思うんだけどね、ハハハハ(笑)。